3/18
2166人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
 神社の裏手にある駐車場に車を止め、そこから階段を上って高台にある敷地内に入った。  たくさんのテントが張られ、大勢の人々でごった返している。色とりどりのテントの下には、所狭しと様々な商品が並べられており、訪れた人達がそれらを興味深そうに眺めたり、手に取ったりしながらそぞろ歩いていた。 「フリーマーケットか」 「そうみたい」  食べ物の屋台もいくつか出ていて、ちょっとした祭りの雰囲気だ。  賑やかな音楽が聞こえてきて入口の方を見てみると、派手な格好をしたチンドン屋が踊りながら演奏しているのが見えた。先頭に立つ男の威勢のよい掛け声と、その後ろに続く鉦、笛、太鼓。時代劇のような出で立ちの男女四人衆が、誰もが知っているアニメソングを奏でながら、市を明るく盛り上げている。 「初めて見た」  佳人は呟いて、じっとその時代錯誤のような不思議な光景に見入った。あんなに賑やかなのに、その光景はどこかもの悲しい感じがする。けれどそれは決して不快なものではなく、むしろ確かな演奏技術で奏でられる軽快かつ哀愁漂う音色は耳にとても心地よくて、不思議と佳人の心は安らいだ。 「なんか…、ずっと聴いていたい」  佳人がポツリと呟くと、芳崎は優しく微笑んでぽん、と佳人の頭を撫でてくれた。  それからせっかくだからと二人して、様々な店を見て回った。日用品から骨董品、カメラや絵画、古本、洋服、食器に家具とジャンルも用途もバラバラな物が目を楽しませてくれる。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!