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「まだ、言ってない。……兄さんが困るの判ってたけど、こんなの相談できるの兄さんだけなんだ」  未だに衝撃から醒められずにいる佳人は必死に言葉を探す。と、その重い雰囲気を破るかのように佳人の携帯が鳴る音が響いた。 「ごめん、」  佳人は救われたような心地でキッチンへと入り、テーブルの上に置かれていたそれを取り上げて目を見開いた。芳崎からのメールの通知だった。 「あ――」  佳人が思わず誠を見ると、誠はすがるような目を向けた。佳人は無意識に携帯をジーンズの尻ポケットへとしまう。 「兄さ、」 「ごめん、俺は、」  思わず遮るように告げる。 「――俺には、判らない。……ごめん」  誠はハッと顔を強張らせ、それから遣る瀬無く床に目を落とした。 「そう…だよね、こんなこと、急に聞かされても困るよね」  ごめん、と痛々しく告げて、背を向けた。  佳人は言うべき言葉を、本当に何ひとつ見つけることが出来ず、細い後ろ姿がドアの向こうに消えていくのを、ただ黙って見送るしかなかった。  
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