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儂が今いただいているのは、常連さん限定裏メニューのひとつである『血溜まりボルケーノ大決戦』――火山を模した固めのパンの表面をスプーンで破ると蒸気と香りが一気に広がる、ごろごろ大きな野菜がたっぷり入った真っ赤なシチューである。先に述べたドラゴン形のパンをふたつ以上浸せば、マグマと血の区別がつかなくなる程の死闘が再現される、という訳じゃな。名前と内容がよろしくないという理由で没メニューになったのを常連限定に格上げ、というかいつだか雑談中に没メニューの話になった時儂が食べたいと店主にお願いしたのが始まり。だってスープじゃなくてとろみのあるシチューなところなんてボルシチとボルケーノかけたのかなって考えられるネーミングだし、血とマグマ同一視するセンスもわくわくしちゃう。儂そういうの好き。ちなみにこれ、雪が降っている間だけの限定裏メニューなのだが今は春。ちょっとした我儘が通っちゃうくらいには常連オブ
常連なんじゃよ。えっへん。
「美味いな……」
大きな野菜とお肉と小麦の三位一体に敬意を表してもう一度言った。若者は大事なことは二度言うんじゃろ?儂知っとる。
「ありがとうございます。でもアオさんがこのカフェ開いた理由を知りたいって仰るから話したのにちゃんと聞いてました? もう一度言います?」
「聞いとったさ。要するにドラゴン大好きなんじゃろ」
「ええそうです大好きですとも!」
数秒前はむぅと口を尖らせていたのが一瞬でにっこり笑顔に変わる。実に良い。若者の笑顔は世界を明るく変えていくのじゃ。
「だから今本当にしあわせなんです。かわいいドラゴンと一緒にお店を開けて、素敵なお客様におもてなし出来る毎日が、何よりも……あ、アオさんお髭にシチュー付いてる。布巾多めに持ってきますから、しばしお待ちを」
「おお、すまんな。お願いするよ」
ぱたぱた店の奥へ走る店主と入れ替わるように、今度は双子のドラゴンたちが、ふわふわこちらへ飛んできた。
「りゅー」
「りゅん」
「おや、おまえさんたち拭いてくれるのかい?」
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