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猫の鏡餅
「ただいま~! まぁ、ユキったら鏡餅みたいね」
帰ってきた奥さんは、旦那さんの横に眠る真っ白な猫の可愛らしさに微笑む。しかし、そんな場合ではない。勝手に出て行った娘と旦那とを仲直りさせようと画策中なのだ。
「ちょっと、あんた! 起きて! 万優子が帰って来ましたんやで」
旦那さんはガバッと起きた。真っ白な猫は、ふみゃあと目を開けたが、また眠る。ミカンがころころと転がり落ちた。
「お父さん、明けましておめでとう……あの人も一緒やけど、上がってもええ?」
一人娘の万優子が帰ってきた! ちょっとしおらしい顔で、居間を覗いてる。
旦那さんは「ふん! 連れて来てしもうたもんは仕方ないやんか」と、嬉しいのを我慢して、渋々あげてやるんやぞと言うが、にまにま顔が崩れている。
「まぁ! ユキったら鏡餅みたいに大きくなって!」
ころりんと転がり落ちたミカンを真っ白な猫の上に乗せる。
「こら、万優子! この猫はシロやで! ほら、旦那さんもコタツに入ったらええわ! 寒かったやろ、酒でも飲もうや」
奥さんと、娘さんは、お父さんは照れ臭いんやと思ったが、やはり初めての挨拶はしなくてはと、万優子の旦那さんは正座している。しかし、その前には猫の鏡餅が! 思わず、プッと吹き出してしまった。
「お父さん、万優子さんを幸せにします」
「当たり前や! 不幸にしたら、猫と仕返しに行くで!」
台所で、お節や、お酒の用意をしていた奧さんと万優子は、猫と仕返しに行っても役に立たんやろと笑った。
「お~い、はようお酒持ってこんかいなぁ! 息子と飲み明かすんや!」
真っ白な猫も起きてきて、親子の足元で夜食をねだる。
『何か欲しいにゃん!』
奧さんは、賑やかなお正月になりそうだと笑った。
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