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「ですから、六角氏は尾張やその近くの動向をよく知っているはずです。このまま今川の勢力が伸びたら、六角氏にとっても厄介なことになると考えているはずです。それなら――」
「手を組んでくれるかもしれん。……そういうことか!」
藤吉郎さんの顔に、ぱっと喜色が浮かんだ。
伊与も佐々さんも、そして甲賀出身の滝川さんも、考え込む仕草を見せる。
そう、ありえるかもしれない。……織田家と六角氏の結託!
六角氏と織田家が同盟し、そして六角氏から援軍を呼ぶことができれば――
今川軍相手でも、勝てるかもしれない!
そう、実はあるのだ。
桶狭間の戦いには、六角氏も参戦していた、という説が……。
2017年に公開された資料『桶狭間合戦討死者書上』によると、桶狭間の戦いで討ち死にした織田軍の家来990人のうち、272が六角氏からの援軍だったとされている。
織田と六角の同盟は、通説ではあまり指摘されない。のちに六角氏は織田信長によって滅ぼされるため、この両勢力の仲がいいはずがないという解釈によるものだ。
だが、信長が六角氏を倒すのはまだ先の話。
この時点においては、すなわち1560年の桶狭間の戦いの時点においては。
織田と六角の同盟はありえる。利害は一致する!
「弥五郎、さすがじゃ、よくぞ六角氏の存在に気付いた!」
藤吉郎さんは、ばしばしを俺の肩を叩いた。
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