第三部 第十九話 新たなる旅路

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第三部 第十九話 新たなる旅路

 六角氏との同盟作戦。  これを実行するために、俺たちは動き出した。  信長は、藤吉郎さんから進言を受け、六角氏との提携を許諾。  俺たちへ、ただちに南近江に出向いて六角氏と話し合うように告げたのだ。 「前年、公方(足利義輝)とよしみを通じておいたのが、ここに来て生きそうだな」  まだ体調が全快しておらず、青白い顔をしている信長は、しかしはっきりとした声でそう言った。  そう、足利義輝と六角氏は関係が深い。  足利義輝が元服したときの烏帽子親(えぼしおや)は、六角氏14代当主の六角定頼(ろっかくさだより)だし、さらに1558(永禄元)年には、義輝は、六角氏15代当主の六角義賢(ろっかくよしかた)の支援を受けて、畿内を牛耳る三好氏の勢力と交戦している。さらにはその後、義輝は、六角氏の仲介で三好氏と和議も結んでいるのだ。  言うまでもなく信長は、前年、足利義輝に拝謁して、交友関係を結んでいる。  この状態ならば、六角氏のもとに織田家が登場しても、無下に扱われることはないだろう。  ……おそらくは、だが。 「余がみずから南近江まで出向きたいところだが、この身体と尾張の情勢では、動くこともできぬ」     
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