4688人が本棚に入れています
本棚に追加
/1327ページ
「弥五郎、今日のお前はいつにもまして頼もしい。気合を入れてやろうと思ったが、その必要はなさそうじゃのう。……よろしい。それではいくぞ、皆の衆。我らが殿と尾張の民と、これからの天下を救うために」
藤吉郎さんの宣言に、俺たちは大きくうなずいた。
熱田を出た俺たちは、まずは津島に到着した。
神砲衆の屋敷に寄り、俺の生存を知らせ、かつ旅の準備をしなければならないからだ。
「あっ、アニキ!」
屋敷に戻るなり、俺を出迎えてくれたのは、甲賀の次郎兵衛だった。
田楽狭間の敗戦後、散り散りになった彼は、しかしなんとか生き延びて、ひとまず津島に戻ってきたらしい。
「次郎兵衛、無事だったか」
「アニキもよくご無事で。心配しておりやした」
「ああ。……生き残ったのはこれだけか?」
俺は屋敷の中を見回した。
次郎兵衛に、自称・聖徳太子ら山田五人衆も、その場にいた。
加藤さんにがんまく、一若もいる。主だったものは生きているようだが、しかし見えない顔もいる。
「はっきりと分かっているだけでも、11人討ち死にしやした。又兵衛、右近、吉兵衛、おぎん、左ノ助――」
次郎兵衛は、次々と名前をあげていく。
いずれも神砲衆の面々で、気のいいやつらだった。
「……皆、立派な最期でした」
「……そうか」
俺は頭を垂らし、首を振った。
仲間の死は、何度経験しても慣れない。
「カンナは? ……カンナはどこにいる?
伊与が尋ねる。
最初のコメントを投稿しよう!