第二十三話 蜂楽屋カンナ

3/7
4664人が本棚に入れています
本棚に追加
/1321ページ
「……蜂楽屋ほうらくやカンナ。それがあたしの名前」  少女――カンナは、涙をぬぐいながら名乗った。 「あたし、あたしはね」  小声で、ゆっくりと語り始める。 「あたしはね、おじいちゃんがイングランド北部出身の商人だったんよ」 「イングランド……」  イギリスを構成している国のひとつだな。 「うん。……アンタは知らんと思うけど、イングランドっていうのは――」 「いや、知ってるぜ。ヨーロッパのグレートブリテン島にある国だろ」 「……あ、アンタよう知っとうね。いままで会うた日本人は、誰もイングランドのことなんか知らんかったとに。ヨーロッパに詳しいん?」 「いや……まあ、いろいろあってな」  まさか未来からの転生者とは言えずに口ごもる。 「で? 君はそのイングランド人の血を引いているのか」 「……うん」  カンナは、語った。  それによると。  昔、あるイングランド人が東南アジアにやってきて、現地の女の子との間に娘を作った。  その後、イングランド人はアジアを去ったが、娘は現地に残った。  そしてその娘は、同じく東南アジアに進出した博多商人の男、蜂楽屋ほうらくやと恋に落ちて結婚した。  そうして、いまから12年前に産まれた子供が―― 「……カンナってわけか」     
/1321ページ

最初のコメントを投稿しよう!