第二十四話 津島到着、そして

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「ん。……あはっ。そんな目でみらんでよ。あたしはさ、その。……これからやって思っとるけんさ! 弥五郎と出会って、これからまた頑張っていこうって、そう決めたんやけん!」 「…………そうだよな。これからだよな」 「そうそう、これからよ!」  誰かと話をしていると、不思議だ。  まだなにも始まっていない、先の展望さえ見えない自分の人生にも、なぜだか勇気が湧いてくる。  そうだ、これからだ。  なにもかも、これからなんだ。  ……せめて気持ちは前向きにいこう。 「あっ、弥五郎。あれ――」  と、カンナが指さした。  はるか彼方に、街並みが見えてきている。 「津島だ」  俺は、そう言った。 「ひゃあ、賑やかだな……!」  到着した津島の町は、加納市場以上の活気に満ち溢れていた。  港町でもある。海のほうには、大きな船が何十艘と停泊していた。  町中は大量の人が行き来している。数多くの店が立ち並び、呼び込みの人が通行人に呼び込みの声をかけている。  かと思うと、 「わっせ、わっせ」  などと、やたらガタイのいい男たちが、米俵を担いで、どこかに向かって走っていった。 「あの米、どこに持っていくんだろうなあ」 「さあねえ。もしかしたら織田家かもしれんね」 「ああ、ありえるな。織田と津島は縁が深いから」  織田家は、信長の祖父、織田信定の代から津島とパイプを作っている。     
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