第二十四話 津島到着、そして

5/8
前へ
/1342ページ
次へ
「瀬戸? ……ああ、そうか」  尾張の東部に瀬戸という土地がある。  陶器作りで有名で、瀬戸物、なんて言葉は21世紀まで残ったほどだ。 「俺の村は瀬戸から近いからな。そりゃ瀬戸のツボくらいあるか」 「やけど、これもあんまり上物やないね。ひとつ30文ってところかいな」 「いいものは、シガル衆が奪っただろうしな。たぶんこいつは、瀬戸から貰ってきた安物か失敗作あたりだろうな……」  ツボを見ながら、俺は言った。  故郷の大樹村がシガル衆に襲われたことは、道中でカンナに教えてある。  彼女はシガル衆の蛮行に怒り、嘆き、俺の境遇に同情もしてくれた。  ――そんなやつら、絶対に許せんよね!  目を剥いて、怒りの感情を見せてくれたのだ。  自分だって大変だっただろうに、それでも人の境遇に悲しみを感じられる彼女に、俺は好感をもった。  カンナには、幸せになってほしい。  俺は気付いていた。  町に入ってから、人々がうろんげにカンナの顔をじろじろ見ていることを。  いちおう金髪は、カンナが持っていた布をかぶって、隠しているし、マントも折りたたんで手に持っているのだが。  しかし顔立ちが白人だ。どうしたって彼女は、目立ってしまっていた。     
/1342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4723人が本棚に入れています
本棚に追加