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「瀬戸? ……ああ、そうか」
尾張の東部に瀬戸という土地がある。
陶器作りで有名で、瀬戸物、なんて言葉は21世紀まで残ったほどだ。
「俺の村は瀬戸から近いからな。そりゃ瀬戸のツボくらいあるか」
「やけど、これもあんまり上物やないね。ひとつ30文ってところかいな」
「いいものは、シガル衆が奪っただろうしな。たぶんこいつは、瀬戸から貰ってきた安物か失敗作あたりだろうな……」
ツボを見ながら、俺は言った。
故郷の大樹村がシガル衆に襲われたことは、道中でカンナに教えてある。
彼女はシガル衆の蛮行に怒り、嘆き、俺の境遇に同情もしてくれた。
――そんなやつら、絶対に許せんよね!
目を剥いて、怒りの感情を見せてくれたのだ。
自分だって大変だっただろうに、それでも人の境遇に悲しみを感じられる彼女に、俺は好感をもった。
カンナには、幸せになってほしい。
俺は気付いていた。
町に入ってから、人々がうろんげにカンナの顔をじろじろ見ていることを。
いちおう金髪は、カンナが持っていた布をかぶって、隠しているし、マントも折りたたんで手に持っているのだが。
しかし顔立ちが白人だ。どうしたって彼女は、目立ってしまっていた。
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