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もうひとりは20代半ばと思われる、やせぎすの侍だった。
侍は、顔を赤くして、女の子に絡んでいる。
「いいじゃねえかよお、あかりちゃん。ヒック。金ならあるんだ、泊めてくれよお、ヒック」
「そんなに酔っぱらっていちゃ、ダメですよ。お母さんも、家に帰ってもらえって言っています」
「そんなつれねえこと言うなよお、あかりちゃん。ヒック。これだけ酔ってちゃ帰れねえよお。泊めてくれ、よお。ウイッ」
「お、お酒くさっ……!」
……なるほど。
なるほどとしか言いようがないくらい、分かりやすいシーンだった。
要するに酔っ払いの侍は宿に泊まりたい。
しかし宿屋はお断り。娘さんを通じて、帰れと言っているようだ。
「うわー、あの女の子、かわいそうやねえ。どうする、弥五郎?」
「どうって……。どうしよう。あんまり酔っ払いと関わりあいになりたくないけど」
そう思いながら、次の行動に悩んでいたそのときだ。
あかりちゃん、と呼ばれた宿の娘は、侍に向かって告げたのだ。
「もう、滝川様。もとは立派な侍だったのに、どうしてこうなっちゃったんですか!」
……滝川?
その名前に、俺は思わず反応した。滝川って――
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