第二十四話 津島到着、そして

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 もうひとりは20代半ばと思われる、やせぎすの侍だった。  侍は、顔を赤くして、女の子に絡んでいる。 「いいじゃねえかよお、あかりちゃん。ヒック。金ならあるんだ、泊めてくれよお、ヒック」 「そんなに酔っぱらっていちゃ、ダメですよ。お母さんも、家に帰ってもらえって言っています」 「そんなつれねえこと言うなよお、あかりちゃん。ヒック。これだけ酔ってちゃ帰れねえよお。泊めてくれ、よお。ウイッ」 「お、お酒くさっ……!」  ……なるほど。  なるほどとしか言いようがないくらい、分かりやすいシーンだった。  要するに酔っ払いの侍は宿に泊まりたい。  しかし宿屋はお断り。娘さんを通じて、帰れと言っているようだ。 「うわー、あの女の子、かわいそうやねえ。どうする、弥五郎?」 「どうって……。どうしよう。あんまり酔っ払いと関わりあいになりたくないけど」  そう思いながら、次の行動に悩んでいたそのときだ。  あかりちゃん、と呼ばれた宿の娘は、侍に向かって告げたのだ。 「もう、滝川様。もとは立派な侍だったのに、どうしてこうなっちゃったんですか!」  ……滝川?  その名前に、俺は思わず反応した。滝川って――     
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