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「あ、はい。……北のほうに、わたしの親戚が住んでいる村、海老原村えびはらむらっていう村があるんですけど。最近、そこに気性の荒いイノシシが出て、田畑を荒らしているんです。それを滝川さまが退治するっていうお話になっていたんですよ」
「なるほど」
「だけど、この様子じゃ無理そうですね」
「そ、そんなことはない!」
滝川一益は声をあげた。
「お、オレは、オレはやるぞ。断固としてやるぞ。米1俵と銭1貫がかかっているんだ!」
「米1俵と」
「銭1貫……」
俺とカンナは顔を見合わせた。
「そういう約束だったんですけどね。イノシシを退治したら、村がそれだけの報酬を出すって。でも――」
「げ、げろ。……げろげろげろげーろ!」
……無理そうだな。
なんでイノシシ退治の仕事の前日に飲んじゃうかなあ。
まあ、酒好きってそういうもんだろうけど。
――それにしても、米1俵と銭1貫か。
俺はカンナをちらりと見た。彼女も俺に、綺麗な顔を近付けてくる。
俺たちは、ひそひそ声を交わし合った。
(銭1貫と米1俵か。欲しいな)
(それも欲しいし、ここで少しでも名を上げれば先の商売に繋がるかもしれんよ?)
(先の商売って……)
(アンタ、武器とか作るの得意なんやろ? ここでアンタが鉄砲なり新しい武器なりでイノシシを退治して有名になってさ、そこからはイノシシ退治の武器とか罠でも作って売りさばけば、儲かるかもしれんばい?)
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