第二十五話 尾州錯乱(と、その余波)

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(イノシシ退治の武器とか罠、か。それがちゃんと効果のあるものなら、確かに需要はあるだろうし、売れるかも――)  と、話していて、ふと気付く。 「あかりちゃん。……あ、ええと、あかりちゃん、でいいかな?」 「あ、はい。呼び方はご自由にどうぞ」 「ありがとう。……あのさ、あかりちゃん。イノシシって、その村の人たちは自分たちで退治しないのかな?」  戦国時代の村人なら、弓なり槍なりで武装していると思うんだけど。  そう言うと、あかりちゃんはちょっと困ったみたいに言った。 「もちろん、村の人たちも退治しようとしたそうですが……。なにせいま、海老原村には若い人がいないから、やっぱり難儀しているそうで」 「若い人がいない? なんで?」 「だって、近ごろ、尾張このくには激しい内乱続きじゃないですか。若い人はどんどんいくさに出て、そのまま行方知れずになったり、亡くなってしまうことが多くて。……海老原村は特にそれが多いんです」  尾張が内乱……。  ――そうか、そうだったな。  1551年冬の尾張の情勢を、改めて思い出す。  そもそも、この時期の尾張を実質的に支配していた戦国武将は誰か。  それは織田弾正忠信秀おだだんじょうのちゅうのぶひでという。織田信長の父親だ。     
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