第二十五話 尾州錯乱(と、その余波)

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「どうだろう、あかりちゃん。そのイノシシ退治、俺たちがやろうか?」 「え。お兄さんが、ですか?」 「うん。……滝川さんがやるのなら、それが一番いいんだろうけど。どう見ても無理そうだし」 「そ、そうですね。……でも、お兄さんがですか……?」  あかりちゃんは、困惑気味に俺を見てくる。  自分とほぼ同世代の少年が、イノシシを倒せるのか?  そういう疑問があるんだろう。  俺は、装備していた鉄砲を彼女に見せた。 「こう見えても、いちおう鉄砲は使えるんだ。ぜひ任せてくれな――」  その瞬間だ。  ――ヒュンッ!  俺の眉間のすぐ先を、『なにか』がかすめた。  その『なにか』はそのまま、俺のすぐ横にあった『もちづきや』の壁に突きささる。  ……え? なに?  思わず、壁のほうを見る。  その『なにか』は、棒手裏剣だった。  先端が見事に尖とがっている、エンピツのような鉄の投擲とうてき武器。  もし突き刺さったら、怪我はもちろん、当たりどころによっては死亡も免れない。  な、なんでこんなもんが、いきなり飛んできて―― 「ヒック」  棒手裏剣が飛んできたほうを見ると、滝川一益が構えていた。  そして彼は、俺をぎろりと睨んでいたのだ。     
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