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第二十六話 滝川一益の謎
「イノシシ退治はオレが引き受けた仕事だ。てめえ、なにオレの仕事を横取りしようとしてやがる。……ヒック。……金1貫と米1俵は、譲れねえよ!!」
凄まじい剣幕で、俺を睨みつけてくる滝川一益。
し、しかし。……は、迫力がすげえ!
酔っぱらっているのに、とんでもない眼力だ。
「ヒック。……ちくしょう、酒のせいで外れちまった。だが次は外さねえ。ウイッ。……オレの仕事を分捕るんじゃねえ!」
「や、やめてください、滝川さま。この人はうちのお客様で――」
「あかりちゃんは黙ってろ!!」
滝川一益はさらに、フトコロから棒手裏剣を取り出した。
かと思うと、いきなり俺のふところまで飛び込んできて、手裏剣の先端を俺の喉元に突きつけてきたのだ。
……早い!
なにもできなかった。
シガル衆の下っ端や、カンナに絡んでいた連中とは段違いの力量だ。
俺は、反射的に、革袋の中の早合に手を伸ばしていたのだが、しかしそれを銃に装填する暇もない。
「仕事を横取りするやつは、ブッ殺す。ひっく」
「う……」
俺はどうにもできず、押し黙った。
だが、そのときだ。
「やめてっ!!」
突然カンナが叫び、いきなり滝川一益の背中にしがみついたのだ。
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