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津島に向かう途中、滝川さんは俺とカンナに謝ってきた。
「なんていうか、酔ってたんだ。特に手裏剣を投げつけたのは悪かった」
今日の滝川さんは、しらふだ。
昨日、彼はけっきょく、あれからいったん家に帰った。
そして今朝、背中に火縄銃を背負って、再びもちづきやに現れたのだ。
俺が使っている銃よりは、綺麗で上質の火縄銃だった。
「――まったくオレの悪い癖だ。この酒癖のせいで、どこに仕官しても長続きしねえ」
「滝川さま、もうお酒はやめたほうがいいですよ」
「いつも翌朝にはそう思ってる。……うぷ」
――しらふだが、二日酔いではある。
さっきから、決して顔色はよくない。
吐き気がするらしい。「すまん」と言って道端に向かってうずくまってしまう。
「……でも、よかったです。今日はもう、お酒を飲んでいないみたいだから。ふだんの滝川さまなら、10日は飲み続けちゃうから」
あかりちゃんが笑顔で言った。
えくぼが、とても可愛い。
「お兄さんの、早合ですか。あれのおかげですね」
「滝川さん、よっぽど衝撃受けたんだな、あれに」
「もともと好奇心と向上心の強いお方ですし。……若いころは、天下一の侍大将になってみせる、っていうのが口癖でしたよ」
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