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津島から1時間ほど歩くと、そこには確かに小さな集落があった。
家屋が数軒と、田畑が少々。小さな村である。人の気配も少ない。
「ここが海老原村だよな? あかりちゃん」
「そうです。あそこに見えている家に、わたしの親戚が住んでいるんですが」
と、彼女が遠くを指さした。
そこには確かに家がある。
「とりあえず、行ってみるか」
そう言って、俺が歩き出そうとした瞬間だ。
「ッ! や、弥五郎!!」
カンナが悲鳴をあげ、あかりちゃんとはまったく別の方向を指さす。
なんだと思って、見てみると――うわっ!!
なんとそこには、問題のヤツが。
そう、畑の中にイノシシがいたのだ。
イノシシは、じろりと、こちらを見てくる。
……だ、大丈夫。
前世で剣次叔父さんから聞いたことがある。
イノシシは本来、臆病な性質で、人を襲うことはめったにないって――
だが、そのときだ。
イノシシは、突然、俺たちのほうへと突っ走ってきたのだ!
な、なんだって!? なんでいきなり!!
イノシシは、文字通りの猪突猛進。
俺たちは思わず左右に避けたが、しかしただひとり、
「カンナ!」
――そう、カンナだけは怯えてしまったのか、その場にぺたんと座り込んでしまった。
「やべえ!」「カンナさん!」「カンナッ!」
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