第二十六話 滝川一益の謎

9/10
4678人が本棚に入れています
本棚に追加
/1325ページ
 津島から1時間ほど歩くと、そこには確かに小さな集落があった。  家屋が数軒と、田畑が少々。小さな村である。人の気配も少ない。 「ここが海老原村だよな? あかりちゃん」 「そうです。あそこに見えている家に、わたしの親戚が住んでいるんですが」  と、彼女が遠くを指さした。  そこには確かに家がある。 「とりあえず、行ってみるか」  そう言って、俺が歩き出そうとした瞬間だ。 「ッ! や、弥五郎!!」  カンナが悲鳴をあげ、あかりちゃんとはまったく別の方向を指さす。  なんだと思って、見てみると――うわっ!!  なんとそこには、問題のヤツが。  そう、畑の中にイノシシがいたのだ。  イノシシは、じろりと、こちらを見てくる。  ……だ、大丈夫。  前世で剣次叔父さんから聞いたことがある。  イノシシは本来、臆病な性質で、人を襲うことはめったにないって――  だが、そのときだ。  イノシシは、突然、俺たちのほうへと突っ走ってきたのだ!  な、なんだって!? なんでいきなり!!  イノシシは、文字通りの猪突猛進。  俺たちは思わず左右に避けたが、しかしただひとり、 「カンナ!」  ――そう、カンナだけは怯えてしまったのか、その場にぺたんと座り込んでしまった。 「やべえ!」「カンナさん!」「カンナッ!」     
/1325ページ

最初のコメントを投稿しよう!