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第二十七話 以後、お見知りおきを
イノシシが、カンナのほうへと突っ込んでいく。
その光景を見た瞬間、俺は吼えた。
「カンナ! マントを思い切り振れっ!!」
「ッ!!」
言われたカンナは、瞬時にまとっていた赤マントを思い切り広げ、振り回した。
ばさっ、と広がるマント。
するとイノシシは、ふいにびくんとその場で跳ねて、下半身をじたばたさせる。
かと思うと。
イノシシは急に右へと曲がり、また田畑のほうへと走っていった。
やがてイノシシは、森の中へと入っていく。
見えなくなった。
……ふう。
どうやら、カンナを助けることができたようだ。
「カンナ、大丈夫か?」
声をかけると、カンナは震えながらも、小さくこくりとうなずいた。
「う、うん。……ごめん、あたし、びっくりして座りこんじゃって」
「いや、突然イノシシが来たら、そりゃ驚くさ」
「しかしいまのイノシシは、なぜいきなり逃げたんだ?」
「イノシシは、急に派手な色が目の前に広がると、仰天して逃げ出す習性があるんです」
首をひねる滝川さんに向けて、俺は説明した。
前に叔父さんから習ったことだった。
イノシシに猛進された場合、対処法はいくつかあるが、そのうちのひとつ。
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