第二十七話 以後、お見知りおきを

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 それは、色のついたものを一気にイノシシの視界に展開すること。  色のついた傘を広げたりするのがいいそうだ。  それをふいに思い出した俺は、カンナにマントを広げることを指示したのだ。 「お兄さん、物知りですね!」 「鉄砲だけじゃなく、そんなことまで知っているのか、山田は」 「いや、たまたま思い出しただけですよ。……カンナ、立てるか?」 「う、うん。……よいしょ、と」  俺が差し出した手を握り、立ち上がるカンナ。  ……なんとかかんとか、場はおさまったようだ。  イノシシに驚いていた俺の馬も、こちらへ戻ってくる。  そこへ、 「いきなり襲われたようじゃのう」  と、後ろから声をかけられた。  振り返ると、そこには老人がいた。70歳くらいだろうか?  人間50年、と言われたこの時代から考えるとけっこうな長寿だ。 「あ、八兵衛爺ちゃん」 「おう、八兵衛殿。久しぶりだな」 「滝川さま、お久しゅうございます。あかり、よく来たの。」  八兵衛と呼ばれたお年寄りは、相好を崩す。  海老原村にいると言っていた、あかりちゃんの親戚だろうな。  滝川さんとも、旧知の間柄のようだ。 「あかり、このふたりは……?」  八兵衛翁は、俺たちのことをじろじろと見る。     
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