4715人が本棚に入れています
本棚に追加
それは、色のついたものを一気にイノシシの視界に展開すること。
色のついた傘を広げたりするのがいいそうだ。
それをふいに思い出した俺は、カンナにマントを広げることを指示したのだ。
「お兄さん、物知りですね!」
「鉄砲だけじゃなく、そんなことまで知っているのか、山田は」
「いや、たまたま思い出しただけですよ。……カンナ、立てるか?」
「う、うん。……よいしょ、と」
俺が差し出した手を握り、立ち上がるカンナ。
……なんとかかんとか、場はおさまったようだ。
イノシシに驚いていた俺の馬も、こちらへ戻ってくる。
そこへ、
「いきなり襲われたようじゃのう」
と、後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには老人がいた。70歳くらいだろうか?
人間50年、と言われたこの時代から考えるとけっこうな長寿だ。
「あ、八兵衛爺ちゃん」
「おう、八兵衛殿。久しぶりだな」
「滝川さま、お久しゅうございます。あかり、よく来たの。」
八兵衛と呼ばれたお年寄りは、相好を崩す。
海老原村にいると言っていた、あかりちゃんの親戚だろうな。
滝川さんとも、旧知の間柄のようだ。
「あかり、このふたりは……?」
八兵衛翁は、俺たちのことをじろじろと見る。
最初のコメントを投稿しよう!