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滝川さんは、さっそく火縄銃を撃つ準備を始めたが、
「しかし、なんだ。……お前もいろいろあるみたいだな」
準備をしながら、そんなことを言った。
「え? なにがです?」
「あんな髪の色の娘と、二人旅とは。よほどの事情とみたぜ」
「…………」
「ま、詮索はしないがな。人にはそれぞれ事情があるだろうし」
「……ええ、まあ」
俺もまた、鉄砲の準備をしながら、
「滝川さんも、いろいろ事情があるんでしょう? あかりちゃんが言っていましたよ。若いころは、天下一の侍大将になってみせる、っていうのが口癖だったとか」
「あいつ……妙なことを言いやがって」
滝川さんは、照れたような、困ったような笑みを浮かべた。
それから彼は、かぶりを振った。
「若いころのタワゴトだ。誰だってあるだろ? 自分がその気になれば、天下のすべてを動かせるって、思い上がっている時代がよ」
「……まあ」
「そんな時代だっただけさ。……いや、悪い。お前はむしろ、これからがその時代だったな。はっはっは――」
滝川さんが、笑う。
すでに銃を撃つ用意はできているようだ。
俺も、準備を終えた。いつでもすぐに弾を撃てる。
さあ、イノシシを探そう。そんなに遠くにはいないはずだ――
と思ったそのときだ。
「ひゃあーッ!!」
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