第二十七話 以後、お見知りおきを

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 カンナとあかりちゃんは、ふたりで抱き合ったかっこうで地べたに転げまわっている。  カンナ。……あかりちゃんを助けたのか! 「いいぞ、カンナ!」 「山田、今度こそ撃つぞ!」 「はい!!」  俺と滝川さんは、揃って銃を構える。  イノシシは、少し走ったところでストップし、身を翻そうとしている。  いまがチャンスだ。逃しはしない!  敵はイノシシ。  人間とは違う。  だから、撃つときにはコツがいる。  ――走りものを射るときは、頭より七八寸先を放つべし。 『稲富流伝書』にある狩猟についての一文だ。  叔父さんに読まされたときは、役立つときがあるのかって思っていたけど。  ……読んどくもんだな!  ――だ、だぁぁぁん!!  俺と滝川さんが同時に鉄砲を撃った。  すると撃ちはなった弾丸が、イノシシの眉間に届き。 「びゅっ――」  イノシシは、息だか声だか妙なうめきを一瞬だけあげ。  そして――その場に、ぶっ倒れた。  俺と滝川さんが構えた鉄砲。  その銃口から、火薬のにおいが漂っている。 「……やったな、山田」 「……手応えアリです」  俺と滝川さんは、笑みを向け合った。 「見事だったな、山田」 「滝川さんこそ。……二日酔いだっていうのにお見事です」 「ふん。……まあな」  滝川さんは、さらにニヤリと口角を上げた。     
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