第二十八話 人間を信じるために

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 カンナの金髪と碧眼を見た村人たちは、最初こそ驚いたものの、八兵衛翁にあかりちゃん、滝川さんの説明もあり、さらに宴のムードもあり、やがてカンナと笑顔で語り合うところまでいった。  カンナは宴を、とても楽しんでいるようだった。  ――だからだろう。  その日の夜。  村の空き家に泊めてもらった俺とカンナだったが。  彼女はふと、こんなことを言い出したのだ。 「ねえ、弥五郎」 「ん?」 「あかりちゃん。いい子やね」  身体を並べて、夜の天井を見上げている俺たち。  カンナは静かに語り出した。 「滝川さんも、いいひと。八兵衛さんも、村のひとたちも」 「……そうだな」  最初、俺は彼女がなにを言おうとしているのか、よく分からなかった。  だから、うすぼんやりとした返事しかできなかったのだが。  ――しかし。  彼女はふいに言った。 「あたし、世の中なんて、自分の敵しかおらんと思いよった」 「…………」  俺は、沈黙。 「お父さんが死んで、部下の人に裏切られて。襲われたり狙われたりして。……あたし、もう。……人間全部が嫌いになりよった」 「…………」 「だけど。……当たり前の話やけど、いいひともやっぱり、おるんやなあって」 「……そりゃそうさ。……そうでなくちゃ、人間なんかやってられないよ」  万感の思いをこめて、そう言った。  前世で出会った、嫌なやつらを思い出す。  さらに今生で出くわした連中。     
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