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カンナの金髪と碧眼を見た村人たちは、最初こそ驚いたものの、八兵衛翁にあかりちゃん、滝川さんの説明もあり、さらに宴のムードもあり、やがてカンナと笑顔で語り合うところまでいった。
カンナは宴を、とても楽しんでいるようだった。
――だからだろう。
その日の夜。
村の空き家に泊めてもらった俺とカンナだったが。
彼女はふと、こんなことを言い出したのだ。
「ねえ、弥五郎」
「ん?」
「あかりちゃん。いい子やね」
身体を並べて、夜の天井を見上げている俺たち。
カンナは静かに語り出した。
「滝川さんも、いいひと。八兵衛さんも、村のひとたちも」
「……そうだな」
最初、俺は彼女がなにを言おうとしているのか、よく分からなかった。
だから、うすぼんやりとした返事しかできなかったのだが。
――しかし。
彼女はふいに言った。
「あたし、世の中なんて、自分の敵しかおらんと思いよった」
「…………」
俺は、沈黙。
「お父さんが死んで、部下の人に裏切られて。襲われたり狙われたりして。……あたし、もう。……人間全部が嫌いになりよった」
「…………」
「だけど。……当たり前の話やけど、いいひともやっぱり、おるんやなあって」
「……そりゃそうさ。……そうでなくちゃ、人間なんかやってられないよ」
万感の思いをこめて、そう言った。
前世で出会った、嫌なやつらを思い出す。
さらに今生で出くわした連中。
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