第二十八話 人間を信じるために

4/7
4682人が本棚に入れています
本棚に追加
/1326ページ
 シガル衆に、なまず屋長兵衛、カンナを襲ったならず者たち――  だけど。  実の両親や剣次叔父さん。  父ちゃんや母ちゃんや伊与。大樹村の人たち。  それに藤吉郎さんにカンナに、滝川さん、あかりちゃん、八兵衛翁――  いろんな人たちの顔が、浮かんでは消え、浮かんでは消えた。 「ねえ、弥五郎。……弥五郎は、悪いやつらを倒す、天下を平和にする。そんな商人になりたいって言いよったよね」 「こそばゆい響きだけどな」 「そんなことなかよ。……弥五郎。あたしもそうなりたい」 「え……」 「あたしは、あたしが大好きなひとたちのために戦えるような商人になりたい。そう思う。……だから、弥五郎」  カンナが、気持ち高めの声を出す。  横を見て、その顔を見ると、彼女はわずかに目を細めていた。 「あたし、これからも頑張るけん。……人間をもっと信じたいから」  その目には、確かに光が灯っていた。  俺は、大きくうなずいた。  翌日。  目を覚ますと、もう昼だった。  イノシシとの戦いで、けっこう疲れていたのかもしれない。  俺は、大きくあくびをしながら上体を起こした。  ……ん? なんか家の外が騒がしいな。  はてなと思って、家を出てみると――げっ!?  10数人もの人たちが、わいわいと集まっている!?     
/1326ページ

最初のコメントを投稿しよう!