第二十八話 人間を信じるために

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 な、なんだこれ。  村人たちが集まっているのか? 「おう、山田。やっと起きたか」 「や、弥五郎~……」  そこには、カンナと滝川さんもいた。 「た、滝川さん。なんですか、この騒ぎは」 「なんですか、じゃないぜ。みんな、お前と蜂楽屋を見たくて集まってきたんだ」 「俺とカンナを……?」 「ああ。昨晩から今朝にかけて、近隣の村まで一気にうわさが広まったらしいぞ。イノシシを銃で倒した少年が、金色髪こんじきがみの娘を連れて、海老原村にいるらしい、ってな」 「そ、そんなことでみんな、集まったんですか?」 「そりゃ田舎は娯楽が少ないからな。金色髪の子を連れている鉄砲使いのガキがいるってだけで、話題としては面白い。集まりもするさ」  集まった人たちは、確かにカンナを見て目を見開かせている。 「――あれが金色髪か」 「きれいな髪じゃのう」 「なんか細工しとるんでねえか?」 「しかし、えらいべっぴんな子じゃのう」 「ありがたや、ありがたや」  カンナを拝んでいるおばあさんまでいる。  金髪を不気味がって、妖怪だの鬼娘だの追いまわしていた人間もいたというのに。えらい立ち位置の変わりようだ。     
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