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まあ今回の場合、海老原村の人たちがすでにカンナを受け入れているのが大きいんだろうけど。
――いや、しかし。これ、いいのかな?
「どうする、カンナ?」
俺はひそひそ声で、カンナに話しかけた。
「え?」
「いや、だって。……なんか見世物みたいで嫌だろ、これ」
「ん……」
カンナはちょっと考えてから、
「大丈夫よ、あたしは」
と、答えた。
「前だったら、もう逃げていたと思うけど。……この人たちだって、悪意をもって見ているわけじゃないのは分かるけんね。だから大丈夫。……最初は見世物かもしれんよ? でも話していけば、仲良くなっていけば、ちゃんと髪の色だけじゃない、あたしのことも見てくれると思う。そう思えるようになったから」
「カンナ……」
そのセリフから、強さが伝わってきた。
カンナの感情の中にある、もっとも熱い部分に触れた気がした。
心の温度、とでも表現するべきか。とてもあたたかな、しかし、もはや揺るがない信念のようなものを、理屈ではなく気持ちで、俺は理解することができた。
俺も、もっと強くならなきゃ。
……そう思った。
「――お、おい、なんだ、お前!?」
そのとき、突如。
滝川さんの声が聞こえた。
はてなと思って振り返る。
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