4725人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、ひとりの少年が、集まった村人たちを強引にかき分けて、俺たちの前までやってきたのだ。
「…………」
そして、沈黙。
男だ。いや、少年というべきか。
15歳くらいの、目元が涼しげな人物。
口をへの字に結んだまま、ただじっと、俺のことを見ている。……なんだ、いったい?
「お前、無礼なやつだな」
滝川さんが、少年に声をかける。
「いきなり来やがって、なんだ。なにか用か?」
「…………」
「無視かよ、おい! いけ好かねえ野郎だな!」
滝川さんは、激しく吼える。
それでも少年は、微動だにしない。
滝川さんの声音にもビビらないなんて、肝に毛が生えてるな。
「…………」
「ちっ、黙ってないでなんとか言いやがれ!」
「ナントカ」
「な……! ――斬新だな、その返し……」
ざ、斬新か?
どっちかといえば古典的な気が……。
いや戦国時代では斬新なんだろうか。
なんとか言いやがれ→ナントカ。
滝川さんは、ヘンに感心してしまっている。
って、そんなことはどうでもいい。
このままじゃ話が進まない。
俺は少年に、問うた。
「あの。……どちら様でしょうか?」
すると少年は、名乗った。
「佐々内蔵助成政」
最初のコメントを投稿しよう!