第二十八話 人間を信じるために

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 すると、ひとりの少年が、集まった村人たちを強引にかき分けて、俺たちの前までやってきたのだ。 「…………」  そして、沈黙。  男だ。いや、少年というべきか。  15歳くらいの、目元が涼しげな人物。  口をへの字に結んだまま、ただじっと、俺のことを見ている。……なんだ、いったい? 「お前、無礼なやつだな」  滝川さんが、少年に声をかける。 「いきなり来やがって、なんだ。なにか用か?」 「…………」 「無視かよ、おい! いけ好かねえ野郎だな!」  滝川さんは、激しく吼える。  それでも少年は、微動だにしない。  滝川さんの声音にもビビらないなんて、肝に毛が生えてるな。 「…………」 「ちっ、黙ってないでなんとか言いやがれ!」 「ナントカ」 「な……! ――斬新だな、その返し……」  ざ、斬新か?  どっちかといえば古典的な気が……。  いや戦国時代では斬新なんだろうか。  なんとか言いやがれ→ナントカ。  滝川さんは、ヘンに感心してしまっている。  って、そんなことはどうでもいい。  このままじゃ話が進まない。  俺は少年に、問うた。 「あの。……どちら様でしょうか?」  すると少年は、名乗った。 「佐々内蔵助成政」
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