第二十九話 加工貿易

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第二十九話 加工貿易

 さ、佐々内蔵助成政(くらのすけなりまさ)!?  知ってるぞ。尾張の土豪、佐々家の三男だ。  のちに織田信長の家来となって活躍する戦国武将じゃないか。  その佐々成政がどうして、海老原村に? 「山田弥五郎」  佐々成政は言った。  え、どうして俺の名前を……。 「聞いた。……不思議な弾を使うらしいな」 「へ? 弾?」 「早合のことじゃないか?」  滝川さんが言った。  そうか、早合のことか。  確かに俺は昨日の宴で、村人たちに早合を見せた。  これでイノシシを倒したんですよー、ってな。  そのうわさが、早くも佐々成政まで伝わって、今日ここまで来たってわけか?  好奇心旺盛だな……。  ――とにかく、早合を佐々成政に見せてみるか。 「……!」  佐々成政は、早合を見た瞬間、目をわずかに見開いた。  それから俺は早合の仕組みについて説明した。  滝川さんのときと同じように。  佐々成政は、二度、三度とうなずいた。 「良い発想だ。こんなものがあるとは」 「どうだ、佐々とやら。ちっとは驚いたか?」 「驚いた」 「……全然驚いたふうにゃ見えねえな、クソ」  滝川さんは佐々成政にそう言ったが――  しかし佐々成政は確かに驚いているようだ。     
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