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「…………(安堵の顔)」
「……ったく、なんなんだよ、おめえは。口があるんだから、話しかけられたらなんかしゃべれよ」
「ナンカ」
「! ま、また斬新な返し……!」
……だから、それ。そんなに斬新ですか?
「世話になった」
佐々さんは、そう言った。
「早合は大事に使わせてもらう。……それでは、おれはそろそろ帰る」
「はい、それでは。……あ、そうだ、佐々さん」
「?」
「山田弥五郎は、津島の『もちづきや』にいます。また早合がご入用なときは、なにとぞお声がけください」
「……承知した。覚えておこう」
佐々さんはそれだけ言うと、馬を引っ張って歩きかけ――
すぐに振り返って、言った。
「佐々内蔵助は比良城にいる。山田もなにかあったときは来るといい」
そして今度こそ、去っていった。
俺は胸に充実感を覚えていた。佐々成政。有名な戦国武将と知り合いになれた。金も手に入った。ひとまず俺は、成り上がりの第一歩を歩み出せたと思う。
だが、まだここからだ。ここからガンガンのしあがっていくぞ……!
「しかし、あの佐々ってやつは、妙な野郎だったな」
海老原村から帰る途中、滝川さんは言った。
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