第三十話 和田惟政登場

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「…………(安堵の顔)」 「……ったく、なんなんだよ、おめえは。口があるんだから、話しかけられたらなんかしゃべれよ」 「ナンカ」 「! ま、また斬新な返し……!」  ……だから、それ。そんなに斬新ですか? 「世話になった」  佐々さんは、そう言った。 「早合は大事に使わせてもらう。……それでは、おれはそろそろ帰る」 「はい、それでは。……あ、そうだ、佐々さん」 「?」 「山田弥五郎は、津島の『もちづきや』にいます。また早合がご入用なときは、なにとぞお声がけください」 「……承知した。覚えておこう」  佐々さんはそれだけ言うと、馬を引っ張って歩きかけ――  すぐに振り返って、言った。 「佐々内蔵助は比良城にいる。山田もなにかあったときは来るといい」  そして今度こそ、去っていった。  俺は胸に充実感を覚えていた。佐々成政。有名な戦国武将と知り合いになれた。金も手に入った。ひとまず俺は、成り上がりの第一歩を歩み出せたと思う。  だが、まだここからだ。ここからガンガンのしあがっていくぞ……! 「しかし、あの佐々ってやつは、妙な野郎だったな」  海老原村から帰る途中、滝川さんは言った。     
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