第四話 家族団欒

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「お前さんはふたりに甘すぎますよ。だいたい男女で相撲なんてやっているのもはしたない。お侍なら元服も近いのに。ああもう、父親がこんなことじゃ……!」 「まあまあ。……しかし弥五郎たちも、あまり遊び回るんじゃないぞ。ふたりの姿が見えないもんだから、お杉はついさっきまで、なにかあったんじゃないかって顔を蒼くして――」 「お、お前さんっ。お説教の途中にそんな話を挟まなくてもいいじゃありませんか」 「義母様。……私たちのこと、心配してくれていたのか?」 「当たり前でしょうが。反省しなさいっ」 「は、はい」  母ちゃんに怒鳴られ、伊与はしゅんとなる。  怒る母に、なだめる父。小さくなる幼馴染。  俺はこの光景を眺めながら、なんだか暖かなものを感じていた。  こういうの、久しぶりな気がするけど。  ……なんかいいな。ほっとする。  仕事に明け暮れ、友達付き合いもほとんどなく、両親を数年前に亡くし――  しまいには叔父の孤独死を目の当たりにしてしまった俺は、心からそう思ったんだ。  そうだ。自分に必要だったのは、まさにこういう、ありふれた団欒だったんだ。  俺は、この時代で自分がやるべきことを決めた。  出世はいらない。歴史を変えようとも思わない。  ずっと、家族と一緒に過ごしたい。  せっかく転生はしたけれど。  ……それでもいいじゃないか。     
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