第三十一話 相国寺余波

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第三十一話 相国寺余波

「滝川久助。津島にいるという噂は、本当だったか」 「た、滝川さん。どちら様ですか、このひとは」 「……和田伝右衛門。近江国(滋賀県)甲賀の豪族だ」 「お初にお目にかかる。自分は和田伝右衛門惟政わだでんえもんこれまさと申す」  和田伝右衛門惟政は、馬鹿丁寧にお辞儀をした。  どうも、実直な性格らしい。  俺とカンナも慌てて頭を下げるが――  しかし俺は内心、驚いていた。  和田惟政だって?  この時期は確かに、まだ近江国甲賀の豪族だ。  だけど、のちに室町幕府と繋がりができて、幕府の奉行衆になる人じゃないか!?  そんな人が、なんで滝川さんと知り合いで、しかもこの津島にいるんだ?  和田惟政は、俺とカンナへのあいさつもそこそこに、滝川さんに食らいつく。 「久助。お前ともあろう者が、なぜこんなところで遊んでいる」 「……なんだっていいじゃねえかよ。それよりお前こそ、どうして津島なんぞに来た」 「久助がいるという噂を聞いて、やってきたのだ」 「オレがいると聞いて……? オレが目的なのか?」 「そうだ。久助、お前の助けが要る。いま、甲賀の里は危機なのだ」 「なに?」 「敵に囲まれ、まさに敗亡しようとしている」     
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