第三十一話 相国寺余波

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「……どういうことだ?」  滝川さんは片眉を上げる。  和田惟政は、説明を開始した。 「ことしの夏、京の相国寺で戦いが起きた。三好長慶の軍勢と、公方様(足利義輝)の軍勢が衝突したのだ」  ……相国寺の戦いか。  その話を聞いて、俺はピンときた。  この時期、京の都を事実上、制圧しているのは、三好長慶という戦国大名だ。  本来、京の主であるべき室町幕府の第13代将軍、足利義輝は、実質的な力がなく、京都を奪回できないでいる。  それを不満に思った足利義輝は、部下の細川晴元ほそかわはるもとと共に、何度も三好長慶を打ち倒そうと試みる。  その過程で発生したのが、1551年7月に京都で起きた相国寺の戦いだ。  足利義輝派と、三好長慶派の戦い。  しかし足利派は敗退し、これによって足利義輝の帰京は絶望的となる。  室町幕府の権威はいよいよ衰退し、天下の行く末が分からなくなっていくのである……。 「……相国寺しょうこくじの戦いの余波は、我が近江の国にも巻き起こっている。すなわち、公方様(足利義輝)は敗北したが、それでもやはり公方様につくべきだという者、現実を見て、三好家と親しくなるべきだという者。派閥は分かれ、争いが始まろうとしている」     
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