第三十一話 相国寺余波

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「久助……」  和田さんの、悲しげなうめきがあたりに響いた。  10分後。  俺とカンナと和田さんは、『もちづきや』の中にいた。  まあ、なにも外で突っ立っている必要はない。  とりあえず中に入ろうじゃないか、ということだ。 《山田弥五郎俊明 銭 18貫742文》 <最終目標  5000貫を貯める>  商品  ・火縄銃   1      ・陶器    3      ・炭    17      ・早合    2      ・小型土鍋  1      ・米    15  炭1を、『もちづきや』にプレゼントした。  場所の使用代と、あとはこの炭を使ってお湯でも沸かしてくれ、と頼んだのだ。 「――久助と自分はな、甲賀でいっしょに忍術の修行をした仲なのだ」  ぽつりぽつりと、和田さんは話し始めた。 「そうだ。もう何年も前になるかな。甲賀の里にふらりと訪れたあいつは、我が父に必死に頼み込み、忍びとして弟子入りすることになった。ふつうアカの他人が里で修行を積むのは難しいが、あいつの父親と我が父が、旧知の仲であったのが幸いした」  滝川さんが忍術に詳しかったのは、そういう過去があったからなのか。  史実でも、滝川一益は甲賀忍者だったという説があるけど。     
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