第三十一話 相国寺余波

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「弥五郎が火薬を扱えるのは本当よ、和田さん。……これ、見てみ。こういうのを、弥五郎は作っとるとよ」  カンナが荷物の中から早合を取り出し、和田さんに見せた。  そして早合の性能も、カンナが説明する。  すると和田さんは「ほう……」と目を見開いて、早合を細かく観察し始めた。  ――さらにそのとき、部屋の中にあかりちゃんが登場し、 「弥五郎お兄さんは、その早合で滝川さまと一緒にイノシシ退治をしたり、比良城の佐々内蔵助さまと商いの取引をしたりしたんですよ」  と、俺たちに白湯さゆを出しながら笑顔で言った。 「ほほう、比良城の佐々内蔵助か。若いが、鉄砲に達者な人物だと聞いたことがあるぞ」 「佐々さんのことを、ご存知なんですか?」 「耳聡みみざとくなければ、甲賀の者は務まらぬゆえな。……いや、しかし山田うじ。この早合といい、佐々内蔵助との繋がりといい、貴殿はすでに実績のある方のようだ。いや、これは自分が失礼であった、申し訳ない」 「あ、いえ……」  あまりに丁寧にお辞儀されたものだから、俺のほうがかしこまってしまった。  やっぱりこの人、真面目だよなあ……。 「では山田うじ。改めてお願いする。甲賀の里のために、火薬を使った武器を作ってくれないか」 「武器……」  佐々さんのときと同じだ。ふたたび、依頼がきた。     
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