第三十一話 相国寺余波

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「なにを作ればいいのですか? 早合ですか?」 「いや。……我が里には、鉄砲を扱える者がそう多くはない。それなのに早合を仕入れても、意味がない」 「まあ、それはそうです」 「誰でも使える火器があれば、里の戦力増強になる。……どうだろうか。甲賀衆300人が全員使える。そういう火器はないだろうか? それもできれば早急に手に入れたいのだが」 「早急に、ですか。難しいなあ……」  そう言われて、俺はちょっと考えた。  誰でも使える火器となると、鉄砲とか、あるいは鉄砲の弾とかじゃダメだ。  さらに、すぐ作れる、となると。……もういっそ、火薬をそのまま敵にふりかけてタイマツでも放り込んだらどうだ、なんて乱暴な発想が出てきたりするのだが――  ん? 待てよ。  火薬をそのまま、ってのはさすがにムチャだが―― 「――焙烙玉ほうらくだまはいかがですか?」  と、俺は言った。  和田さんは、ふむ、と目を見開いた。 「焙烙玉。……名前は聞いたことがあるぞ。確か、瀬戸内海の海賊がよく使っている火器ではないか?」 「さすがは和田さん、ご存知でしたか。その通りです」  俺は笑顔でうなずいた。 「ねえねえ弥五郎、焙烙玉ってなん?」     
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