第三十一話 相国寺余波

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「焙烙玉っていうのは、陶器の中に火薬を詰め、そこから導火線を伸ばしたものだよ。線に火をつけて、敵に向かって投げつける。そうすれば――陶器は爆裂し、敵兵に痛手を与えることができるってわけさ」 「左様、そう聞いている。……なるほど、焙烙玉か。それならば確かに、鉄砲よりは扱いが楽だ。火をつけて投げる。誰でも使えるな」 「手ぬぐいに包んで、ブンブンと振り回しながら投げるといいですよ。投石と同じ要領です」 「なるほど、なるほど。……これはいい! 焙烙玉、ぜひ作っていただきたいな。……しかしそんなもの、本当に作れるのか?」 「作れます。材料さえ集めれば、すぐに」  俺がそう言うと、和田さんは「頼もしいことだ」と、大きくうなずき、 「その火器が本当に価値のあるものならば、もちろん有料で購入しよう」  と、言った。 「しかし自分は、まだ焙烙玉の現物を見たこともないのでな。……どうだろうか、山田うじ。まずは試作品をひとつ、作ってみてくれないか。その結果次第で、大量に生産してもらうかどうかを決めよう」 「それはごもっともです。……かしこまりました。では試作品を作りましょう!」  よし、このチャンスは必ず活かすぞ。  焙烙玉を作って儲けるんだ。……それにしても、加工貿易ルートはやはりイケるな。このペースでどんどん稼ぎたい。 「しかし……やはり久助。あいつが戻ってきてくれたら……」  最後に和田さんは、ぽつりと言った。     
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