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第三十二話 もののふ一生の業
津島の町中である。
「焙烙玉を作るのは、そう難しくない。陶器の中に黒色火薬と、縄を入れる。そして陶器の口から、縄をニュッと出せば完成だ。――縄に火を点ければ、陶器の中の火薬に火がついて、ドッカーン! ……火の勢いと、破裂した陶器の破片が、敵を攻撃するってわけさ」
「陶器はどういうのがいいの?」
「火薬を詰められるなら、まあなんでもいいっちゃいいんだけどな。本来は食器の焙烙を使うんだ。だから焙烙玉っていうんだけどな」
カンナとふたりで、テクテク歩きながら話す。
「で、さしあたって試作品の焙烙玉1を作るのに、陶器1、黒色火薬1、縄1が必要だと思う。そして黒色火薬は店のものを買うよりも、また素材を集めて自作したほうが安いだろうな」
「なら陶器はもうあるけん、必要なんは火薬1と縄1やね。縄はあたしが買うてくるけん、弥五郎はまた材料を集めて、火薬を作りんしゃい」
「そうだな。役割を分担しよう」
こうして、俺はカンナと別れ、火薬を作るために動きだす。
火薬を作るのに必要なのは、炭と硝石と硫黄だ。
炭はあるから、硝石と硫黄を買いにいこう!
俺は、津島の町を駆けだした。
「え、硝石がない!?」
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