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大樹村の片隅に、盛り上がった丘陵がある。
その丘の上には、村の者が共同で使う小屋があった。
中はけっこう広くて、村で使う木炭や、薄汚れた毛皮、古い紙切れ、農具、陶器、壺、稲ワラ、漆などさまざまなものが積み重ねられている。
その小屋に、俺たちは避難した。
俺たちだけじゃない。村のお年寄りや子供、それに、子を持つ母親たちがここにいる。
避難しつつも、誰もが小屋から顔を出し、村の戦況をうかがっていた。
村衆は、男はもちろん、女も子供がいなければ、野盗たちと戦っていた。
村人たちは野盗に向けて矢を放ち、あるいは石つぶてを投げる。
さらに迫ってきた敵に対しては、槍や刀で応戦している。
そこへ――どおん、と轟音が響いた。
父ちゃんが、火縄銃を撃ち放ったのだ。
その音の大きさに、野盗たちは一瞬ひるんだ。
だがすぐに態勢を立て直し、再び村に攻め寄せてくる。
「あいつら、強い。ただの山賊じゃない。団結している。何者だ……?」
俺のかたわらで、伊与がつぶやいた。
「あいつらはきっと、音に聞くシガル衆だよ」
「シガル衆?」
伊与が尋ねると、母ちゃんはうなずいた。
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