第五話 シガル衆

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 大樹村の片隅に、盛り上がった丘陵がある。  その丘の上には、村の者が共同で使う小屋があった。  中はけっこう広くて、村で使う木炭や、薄汚れた毛皮、古い紙切れ、農具、陶器、壺、稲ワラ、漆などさまざまなものが積み重ねられている。  その小屋に、俺たちは避難した。  俺たちだけじゃない。村のお年寄りや子供、それに、子を持つ母親たちがここにいる。  避難しつつも、誰もが小屋から顔を出し、村の戦況をうかがっていた。  村衆は、男はもちろん、女も子供がいなければ、野盗たちと戦っていた。  村人たちは野盗に向けて矢を放ち、あるいは石つぶてを投げる。  さらに迫ってきた敵に対しては、槍や刀で応戦している。  そこへ――どおん、と轟音が響いた。  父ちゃんが、火縄銃を撃ち放ったのだ。  その音の大きさに、野盗たちは一瞬ひるんだ。  だがすぐに態勢を立て直し、再び村に攻め寄せてくる。 「あいつら、強い。ただの山賊じゃない。団結している。何者だ……?」  俺のかたわらで、伊与がつぶやいた。 「あいつらはきっと、音に聞くシガル衆だよ」 「シガル衆?」  伊与が尋ねると、母ちゃんはうなずいた。     
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