第六話 覚醒のとき

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 俺の、能力……? 能力だと……!?  この場で役立つ俺の能力なんて――  戸惑う俺だったが――しかし一秒にも満たぬ逡巡の直後、光り輝くような思考が浮かんだ。 「――散弾。……そうだ、散弾を使えば……」  散弾とは、その名の通り、小さな弾丸を無数に散開発射する弾丸のことだ。  日本の火縄銃は丸い弾しか発射できないと誤解されているけれど、銃の構造としては散弾を発射することになんの問題もない。  簡単な散弾の作り方は、こうだ。プラスチックなどの薬きょうの中に、小さな鉛の弾丸、フェルトと呼ばれる羊毛、火薬を投入していき、最後にフタを閉じる。 「散弾を作れば……そうだ、武器が鉄砲一丁でも、散弾を撃てば――一度にふたり、三人の敵を負傷させられる……最低でもこけおどしにはなる……」 「や、弥五郎。お前、どうした?」  父ちゃんが、心配そうに声をかけてくる。だが俺は答えず、 「父ちゃん! 鉄砲を撃つための火薬はまだある!?」 「え? あ、ああ――そりゃ、もちろんあるが……」 「よし。じゃあ俺にくれ! それと銃も!」 「弥五郎、なにをするつもりだ?」 「いいから、早く!」  父ちゃんは呆然としながらも、銃と革袋を差し出してきた。     
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