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袋を開く。中にはまさに、鉄砲を撃つための黒色火薬が入っていた。
欲しかったのはこれだ。
俺はそれを受け取ると、小屋の中を一度ぐるりと見回した。
散弾用の弾丸を作っている暇はない。床に落ちている小石と砂をかき集めて代用する。
フェルトは、小屋にある動物の毛皮――これなんの毛皮だ? まあいい、こいつが使える。
火薬は父ちゃんから貰ったものを詰める。プラスチックケースは、小屋の中にある紙で代用するしかない。これを薬きょうにして、油には漆を用いれば――よし、いけるはずだ!
俺は材料をかき集め、みるみる散弾を作りあげていく。
――10年ぶりだ。能力を発揮するのは。
そう、武器を作るのは……!
「やつらが来たぞ!」
村人のひとりが叫んだ。
その通り、シガル衆が、すでに小屋の近くにまで迫ってきていた。
村人たちは――
「どうするんだよ、もう逃げられんぞ!」
「弥五郎はなにをやっとるんだ!?」
「おい、もう降参しよう!」
村人たちは、無残なほどに混乱していた。
もはや団結はなかった。
その場に突っ伏し、念仏を唱え出す者さえいたのだ。
「弥五郎……!」
伊与の声が聞こえた。
人生の終焉を覚悟したような、悲痛な声音。
だが、俺は。村人たちの絶望とは裏腹に――
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