第九話 5000貫の価値

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「300文だ。……ははっ、弥五郎も伊与もそんな顔をするなよ。家に戻ればさすがにもう少しあるがな、それでも5000貫なんて、とてもとても。村中から集めてもそうはなるまい。……つまりだ。さっきはシガル衆を倒せるなんて言ったが、ありゃ軽口だった。そんなことは無理だ」  父ちゃんは明るく言った。  伊与は、無言になった。現実を知ったからだろうか。  俺も、口を開かない。これは単に話題がなかったからだが。  ――ただ、5000貫、という数字だけは強く脳裏に焼きついていた。  と、そのときである。ふいに、父ちゃんが叫んだ。 「おい、見えたぞ、あれが目的地だ。――加納の町だ!」
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