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「弥五郎、やはりお前は、儂より才があるようだ。その歳で楽市を知っているくらいだからな。……どうだ、今回は、お前が商いの中心となってみるか?」
「えっ、俺が!?」
「またお前さん、そんなことを言って!」
「いや、この子には、きっと普通じゃないなにかがあるぞ」
「いい加減にしてくださいな、お前さん。まずは商売の手伝い、そう例えば商品の陳列とか簡単な仕事をやらせてから、少しずつ大きな商売を任せていけばいいじゃないですか」
「いや、違う。男は大仕事を任されることで成長するものだ」
「ああ言えばこう言う……もう! お杉は反対ですからね!」
母ちゃんは怒った。
しかし父ちゃんは懲りもせず、俺の瞳を一直線に見据えてから言う。
「母ちゃんはああ言うが……弥五郎。儂はお前も信じている。お前ならきっと、儂よりもうまい商売ができるはずだ。……そうだな」
父ちゃんは、馬に取り付けた荷物の中からなにかを取り出した。
それは、薪(たきぎ)だった。
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