第十五話 藤吉郎登場

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 だから、秀吉がこうして炭を買うために小者として走り回っていても、そこは別におかしくない。  ……だが、なんにせよ、この人と関わるのは本当にまずい!  自分のわずかな行動ひとつで、歴史が大きく変わる可能性がある。  これまでも、シガル衆と戦ったり、散弾を作ったり、炭団を作ったり、歴史を変える可能性がある行動をしてきた俺だったが――しかし、すべては自己防衛のため、家族のため、村のためだった。  それに、しょせんは日本の片隅で小僧がちょろちょろ動き回っただけであり、まさかこの程度で歴史が動くことはあるまいと、どこかタカをくくっていたところがある。  だが、実際に歴史上の人物が目の前に登場すると、さすがに冷や汗が出る……。  藤吉郎は、父ちゃんと陽気に話し合っている。 「さっきも言ったがよ、わしゃよ、那古野城の薪炭奉行の下で働いておる」 「はい、伺いました」 「うん。それでわしゃの、城の薪炭の費えを、少しでも安くしようと思っておるのよ。たかが炭、たかが薪の費用といっても、1年間、積もり積もれば馬鹿にならん。その経費を安くするために、動いておる。――どうじゃろな、先ほど汝らが売っておった、その」 「炭団でございますか」     
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