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「そうそう。あれを分けてはくれまいか。あの炭は長持ちすると聞いた。炭を普通に買うよりも、効率よく使えるかもしれん」
「なるほど。しかし炭団は、手前の息子がわずかに50個、作っただけでありまして。お城で要りようになるほどの量は、まだ生産しておらぬのですよ」
「なに、息子」
藤吉郎は、ぎょろりと俺を見つめてきた。
ぎくり。身を固くさせる、俺。
「ほほう。こちらの息子殿が、あの変わった炭を作ったのか。やるのう」
「ははは、我が子ながら、なかなか変わった発想をする子でして」
「そのようじゃ。……しかし困った。そうか、炭団はそんなにたくさんないのか」
「どうでしょう、ただの炭ならば、村に戻ればありますが」
「大樹村は、なまず屋のような商人よりも、安く炭をわけてくれるかのう?」
「さて、それは村に一度戻って、村衆と話をしてみねば――しかし、一度だけの購入ではなく、今後も継続してお取引をしていただけるのであれば、きっと皆も前向きに考えてくれましょう」
父ちゃんは、藤吉郎と、すなわち那古野城と炭の取引をしたいようだ。
お城に直接炭を売れば、しかもこの後、取引を続けてもらえるのであれば、村としては定期的な収入が安定して入ってくることになる。父ちゃんが前向きになるのは当然だろうな。
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