第十五話 藤吉郎登場

4/7
4684人が本棚に入れています
本棚に追加
/1327ページ
 それにしても、いよいよ藤吉郎との縁が深くなっていく。まずいなあ。  ……いや、落ち着け。ただ村の炭を売るだけだ。  それだけなら歴史に、そんなに影響はないだろう。  ――と、思うんだが……。  だいたい深く考え出すと、キリがないんだ。  例えば俺が道端になっている柿をひとつ食ったとする。そうしたら、その柿を本来食う予定だった旅人が餓死するかもしれない。で、その旅人の遠い子孫が、のちの西郷隆盛だとか坂本龍馬だとか、そういう有名人だったとしたら――はい、これで歴史は変わりました。  ささいな動きが歴史を変えるとはそういうことだ。いわゆるバタフライエフェクト。取るに足らない些末な行動ひとつでも、結果はみるみる変わってしまうものなんだ。  だけどそれを言い出したら、食事もまともにできない。ある程度は開き直るしかない。  そもそも俺には歴史を変えようなんて、そんな意思などさらさらないんだ。  両親や伊与と、ずっと一緒に暮していけたら、それでいいんだ。  ……だが、そんな俺の心は知らず。 「それじゃ、大樹村までちょっくら行ってみるかのう!」  藤吉郎は、父ちゃんと意気投合し、村に行くことを宣言した。  その後、俺たちは大樹村に戻った。     
/1327ページ

最初のコメントを投稿しよう!