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それにしても、いよいよ藤吉郎との縁が深くなっていく。まずいなあ。
……いや、落ち着け。ただ村の炭を売るだけだ。
それだけなら歴史に、そんなに影響はないだろう。
――と、思うんだが……。
だいたい深く考え出すと、キリがないんだ。
例えば俺が道端になっている柿をひとつ食ったとする。そうしたら、その柿を本来食う予定だった旅人が餓死するかもしれない。で、その旅人の遠い子孫が、のちの西郷隆盛だとか坂本龍馬だとか、そういう有名人だったとしたら――はい、これで歴史は変わりました。
ささいな動きが歴史を変えるとはそういうことだ。いわゆるバタフライエフェクト。取るに足らない些末な行動ひとつでも、結果はみるみる変わってしまうものなんだ。
だけどそれを言い出したら、食事もまともにできない。ある程度は開き直るしかない。
そもそも俺には歴史を変えようなんて、そんな意思などさらさらないんだ。
両親や伊与と、ずっと一緒に暮していけたら、それでいいんだ。
……だが、そんな俺の心は知らず。
「それじゃ、大樹村までちょっくら行ってみるかのう!」
藤吉郎は、父ちゃんと意気投合し、村に行くことを宣言した。
その後、俺たちは大樹村に戻った。
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