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村についたときは、もう夜だったため、その日はもう眠ることにする。
藤吉郎には、村の空き家に宿泊してもらった。
そして、翌日。俺たち四人は、改めて藤吉郎と向かい合う。
父ちゃんは言った。
「先ほど、村衆と話をして参りましたが、炭を那古野城に売る話はまとまりました」
「ほう、大慶。いや、ご苦労じゃったのう、牛松どの」
「いえいえ。……それで、合議で決めましたが、炭のお値段は、炭1束につき23文となりまして」
「それは安い! だが、その値段で大樹村は儲かるのか?」
「あまり儲かりませんなあ」
父ちゃんは苦笑しながら、そこは正直に言った。
そりゃそうだ。普段、炭1につき60文で販売している大樹村なのだから、23文は出血だ。
「しかし今後も末長いお付き合いになることを見込んで、破格のお値段にさせていただきました」
「偉い、牛松どの。偉い、大樹村。汝らの器は尾張一、いや天下一じゃあ!」
藤吉郎は大げさに手を叩き、満面の笑みを浮かべた。
「ところで、村にある炭はいかほどかの?」
「いや、それが。……なにぶんこれから冬になるので、村でも炭は必要です」
「そりゃ、そうじゃの」
「ですので、いま那古野にお分けできる炭は、どれほど捻出しても100束といったところで」
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