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「ううむ! 瓦でこんなものを作ってしまうとは! これなら確かに、炭100で500分の火力を出せる……いや、もっとか!? 弥五郎、汝ァ……やるもんじゃのう! これなら、いま必要とする炭は100で充分じゃわ!」
「ご満足いただけましたか」
「おうとも、満足満足! 見事じゃ、弥五郎。戦場でも役に立つ方法を教えてくれるとは……このやり方、那古野城で使ってええんじゃな!?」
「もちろんです。どんどん使ってください。その代わり――」
「おう、分かっとるで。今年はむろん来年以降も、那古野城で薪炭が必要になったときは大樹村から買おう。わしから奉行様にしっかりと伝えておく。いやあ、ありがとう!」
太陽のような笑みを浮かべて、藤吉郎さんはニコニコ笑った。
……やってよかった。心からそう思う。
のちの豊臣秀吉。人心掌握に長けた英雄。
まったく、人たらしとはよく言ったもんだな。
このひとのためなら、もっとなにかしてあげないと、って思ってしまう。
人徳というか魅力というか……。
ところで瓦ストーブを作るのは、ちょっとだけ手間だった。
いや、ストーブそのものを積み上げるのはそう難しくなかった。
ただ、瓦を集めるのがね。
俺たち家族は、村中はもちろん、近隣の村や寺まで駆け回って古瓦を集めた。
どんなところにも、不要になったボロ瓦が少しはあるもんだからな。
そして俺は、かき集めたその瓦を積み上げてストーブを作ったのだ。
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