第十六話 取引成立

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「ううむ! 瓦でこんなものを作ってしまうとは! これなら確かに、炭100で500分の火力を出せる……いや、もっとか!? 弥五郎、汝ァ……やるもんじゃのう! これなら、いま必要とする炭は100で充分じゃわ!」 「ご満足いただけましたか」 「おうとも、満足満足! 見事じゃ、弥五郎。戦場でも役に立つ方法を教えてくれるとは……このやり方、那古野城で使ってええんじゃな!?」 「もちろんです。どんどん使ってください。その代わり――」 「おう、分かっとるで。今年はむろん来年以降も、那古野城で薪炭が必要になったときは大樹村から買おう。わしから奉行様にしっかりと伝えておく。いやあ、ありがとう!」  太陽のような笑みを浮かべて、藤吉郎さんはニコニコ笑った。  ……やってよかった。心からそう思う。  のちの豊臣秀吉。人心掌握に長けた英雄。  まったく、人たらしとはよく言ったもんだな。  このひとのためなら、もっとなにかしてあげないと、って思ってしまう。  人徳というか魅力というか……。  ところで瓦ストーブを作るのは、ちょっとだけ手間だった。  いや、ストーブそのものを積み上げるのはそう難しくなかった。  ただ、瓦を集めるのがね。  俺たち家族は、村中はもちろん、近隣の村や寺まで駆け回って古瓦を集めた。  どんなところにも、不要になったボロ瓦が少しはあるもんだからな。  そして俺は、かき集めたその瓦を積み上げてストーブを作ったのだ。     
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