第十九話 大樹村の悲劇

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 東の空がわずかに白ばみはじめたころ、殺戮者のひとりが、 「無明(むみょう)様」  と、シガル衆の中でもひときわ大きな男に声をかけた。  乱髪を束ね、肌が浅黒く焼けている人物だ。  無明と呼ばれたその男が、どうやら首領らしい。 「もはや、殺すやつも分捕るものもありませんぜ」 「そうか、そろそろ、引き上げ時か」  無明と呼ばれた大男は、ニヤリと邪悪に微笑んだ。 「この村のやつらも、ずいぶんと頑張ったがな」 「無明様の采配のおかげで、今回は我らの勝利ですぜ」 「あの妙な弾を撃つ小僧もいなかったしな」  げらげらげら、とシガル衆が笑う……。  無明と呼ばれている男は、前回はいなかった。  そうか、今回はシガル衆の頭目が直に采配を振ったってわけか。  村のみんなも前のとき同様、必死に戦ったんだろう。  だがリーダーがみずから来ては、勝ち目はなかったに違いない。  ……無明。  その顔、その声、その名前、その風体。   俺はおそらく、やつのすべてを生涯忘れないだろう。 「それでは帰るぞ、お前たち。……今夜は収穫だった!」 「「「おおーっ!」」」  シガル衆は勝ちどきをあげながら、大樹村を去っていった。  俺と藤吉郎さんは、ふたりでなお、草むらの中に隠れ続けた。  焼け跡となった大樹村。     
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