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俺たちがその村跡を静かに歩きだしたのは、シガル衆が立ち去ってから数分後のことだった。
「こいつは……ひどいの」
藤吉郎さんは、眉をひそめて集落の中を見回していく。
俺はただ、呆然と立ち尽くすのみである。
ちょっと前まで、みんな元気に生きていたのに。……それがどうして。
いまさらながら、自分がやってきた世界が乱世なのだと気づかされる。
「――そうだ、父ちゃん。母ちゃん。伊与!」
俺は慌てて、自分の家へと駆けていく。
家はほとんど黒焦げで、柱組みだけが残っていた。
――そして。
「……あ」
「どうじゃ、弥五郎。……む」
「あ、あ、あ」
体中から力が抜け落ちた。
……生きる力そのものが、抜けていくようだった。
「おとうちゃん、おかあちゃん」
死体がふたつ。ゴミのように転がっていた。
衣服を剥がれ、全身をずたずたに切り裂かれてはいるものの、間違いなく母だと分かる遺体。
槍で突かれまくった、突き傷だらけの――首が半分切断されている男の遺体。父である。
「うぁ――うああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!」
咆哮が、暁の空にむなしく響いた。
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