4666人が本棚に入れています
本棚に追加
/1321ページ
――強くありさえすれば、自分を守れる。家族も仲間も守れる。
――このクソみたいな現実を、すべて吹っ飛ばしてやれるのに!!
以前、シガル衆に襲われたとき、こう思った。
そして、前回は守り抜いた。
だが、今回は。
……目の前でシガル衆が暴れ回るのを、一晩中ただ見ていただけだ。
悔やんでも悔やみきれない。けっきょく自分はなにもできなかった。
なにが神の子だ。馬鹿々々しい。知識と能力を使って活躍して、ちょっといい気になって。
その挙句がこの体たらくだ。なんてざまだ。誰も守れなかった。ただひとりも守れなかった!
……父ちゃん、母ちゃん。ごめん。……俺、なにもできなかったよ……!
「弥五郎」
そのとき、ふいに藤吉郎さんが怪訝声を出した。
「伊与はどこじゃ?」
「……え?」
「伊与の死体が、見つからんぞ」
「な、なんですって!?」
藤吉郎さんにそう言われて、俺は村中を駆け回った。
藤吉郎さんとふたりで、村の近くまで含めて、さんざんに探し回ったのだ。
しかし――
いない。確かに伊与がいない。
生存者はいないが、伊与の死体もまた見つからない。
と、いうことは。
「伊与は……生きている……?」
「生きておる。……そうじゃ、きっと生きておるぞ、弥五郎!」
最初のコメントを投稿しよう!