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「生きてる。……生きてる! い、生きている! 伊与が……伊与が生きているっ!?」
それは闇の中に灯を見い出したかのような興奮だった。
生きている。とにもかくにも彼女は生きている!!
「だ、だけど、だったらどうしてここにいないんだ。もしかして敵にさらわれて――」
「いや、わしはずっと見ておった。奴らが娘をさらっていくような様子はなかった!」
「じゃあ、じゃあ伊与は、死んでいなくて、敵にも捕まっていなくて」
「きっと逃げたんじゃ。逃げのびたんじゃよう、弥五郎!」
藤吉郎さんは、喜色を満面に浮かべて叫んだ。
つられて俺も、涙をわずかに浮かべつつ笑った。
「は……はは……ははは、そうか、逃げたんだ! 逃げたに違いない。ですよね、藤吉郎さん!」
「そうとも、逃げたんじゃ! わはははは、やった、やったぞ! 伊与は生きておるぞぉっ! やったーっ!! やったぞおーっ!!」
藤吉郎さんは、両手を高々と上に挙げた。
俺も、叫び出したい気分だった。……伊与がどこかで生きてくれている!
その可能性があるだけで、どうしてこんなに涙が流れるんだ! どうしてこんなに嬉しいんだ!!
「……見つけだす。伊与を絶対に見つけだす。見つけ出して、今度こそ必ず守るぞ……!」
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